目次
心臓リハビリテーション指導士の取得を目指して勉強中のりよたろです
心リハ指導士を目指す皆さんは、既に気づいているかと思いますが、
この資格試験には、過去問がありません!!!
問題集がありません!!!
インターネットで検索しても、わずかな方のわずかな記憶が垣間見えるのみ。。。
本試験の勉強をするには、
日本心臓リハビリテーション学会が出版している
なんと合計383ページの
2022年増補改訂版 指導士資格認定資格準拠 心臓リハビリテーション必携
これを読むのみです
私にはそんな効率の悪い勉強は耐えられなかったので、先輩方の力を借りることにしました
私の職場にいる、既に心リハ指導士の資格を取得した先輩、同僚に、
記憶の許す限り、過去問作成にご協力頂きました!!
というわけで、ただ過去問を共有するだけではつまらないので、
過去問について勉強がてら解説しつつ、一問一問を深く考えてみようと思います
ということで、今回は
「第11回 弁膜症と先天性疾患 編」 を勉強していこうと思います
心リハ指導士試験 過去問 弁膜症編 part1
僧帽弁閉鎖不全症(MR)の原因疾患として誤った選択肢はどれか(2021年、2019年)
- 拡張型心筋症
- 感染性心内膜炎
- 急性心筋梗塞
- 慢性心不全
正しい選択肢:1,2,3 誤った選択肢:4
心リハ指導士試験 過去問 弁膜症編 part2
心臓弁膜症の外科的治療として誤った文章を選択せよ
- 急性の僧帽弁閉鎖不全症は緊急手術の適応となる
- 失神・心不全などの有症状の大動脈弁狭窄症は手術適応となる
- 僧帽弁狭窄症は弁口面積1.5cm2以下が手術を考慮する目安である
- 高齢化などによって手術リスクが高く開心術不適合の大動脈弁狭窄症は、内科治療へ移行する
正しい選択肢:1,2,3 誤った選択肢:4
心リハ指導士試験 過去問 弁膜症編 part3
心エコーの画像を見て、誤っているものを選択せよ (2012年、2019年)
- この画像は僧帽弁閉鎖不全症である
- 青色が逆流を示す
- この画像は収縮期である
- 矢印の部分は左房である
正しい選択肢:1,3,4 誤った選択肢:2
心リハ指導士試験 過去問 弁膜症編 part4
大動脈弁狭窄症の重症度判定に必要な評価はどれか
- 弁口面積(AVA) cm2
- 圧較差(mPG) mmHg
- 最大血流速度(max PG) m/s
- 逆流量 ml
正しい選択肢:1,2,3 誤った選択肢:4
心リハ指導士試験 過去問 弁膜症編 解説
心臓弁膜症には多岐にわたります
- 大動脈弁閉鎖不全症・狭窄症
- 僧帽弁閉鎖不全・狭窄症
- 三尖弁閉鎖不全・狭窄症
- 肺動脈弁閉鎖不全症
中でも大動脈弁・僧帽弁に関しては実際に患者と出会う頻度も高く、出題されやすいです
大動脈弁・僧帽弁について、順番に解説していきます
僧帽弁狭窄症
原因 | 病態生理 |
リウマチ熱による石灰化 | 拡張期の左房〜左室の流入障害 →左房圧上昇、左房拡大 →心房細動 →右心不全 |
弁膜症治療ガイドラインは図がわかりやすく参考になります
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/04/JCS2020_Izumi_Eishi.pdf
僧帽弁狭窄症まとめ
・原因はリウマチ熱がほとんどであり、近年減少している
・左房→左室への拡張期の流入障害が主である
・弁口面積1.5cm2以下、かつ有症状で手術を検討する
・NYHA II以上の有症状、心房細動の出現、血栓塞栓症状で手術を検討する
僧帽弁閉鎖不全症
原因 | 病態生理 |
慢性 ・リウマチ熱 ・動脈硬化による弁輪石灰化 ・拡張型心筋症 急性 ・外傷 ・感染性心内膜炎 ・心筋梗塞(乳頭筋断裂) など | 僧帽弁逆流による、左房〜左室への容量負荷 →左房拡大、左室拡大 →左心不全、右心不全 |
上記の中でも、急性心筋梗塞による乳頭筋断裂、感染性心内膜炎は急性に発症します
急性に発症し、血行動態の安定が得られない場合、緊急手術の適応となります
重症度評価
僧帽弁閉鎖不全症の重症度評価には3つに分けられます
・見た目の評価 (定性評価)
・見た目 + 数字で評価 (半定量評価)
・数字で評価 (定量評価)
見た目の評価(定性評価)は、図のような、カラードップラーで表現されます
カラフルなモヤモヤがいわゆる「逆流」です
色の使い分けとしては、エコーを当てた位置から
・近づく血流を赤色
・遠のく血流を青色
・乱流をモザイク
として表示します
しかし、定性評価は見た目の評価であり、重症度を過小評価しやすいところが難点です
素人は、見た目でこんなもんかー、と逆に分かりやすいですね
一方、見た目 + 数字で評価 (半定量評価)と、数字で評価(定量評価)は、
機能性の僧帽弁閉鎖不全症の評価には向かない特徴があります
軽症 | 中等症 | 重症 | 備考 | |
縮流部幅(VC)幅 cm | 0.3以下 | 0.3-0.69 | 0.7以上 | 機能性MRの評価には向かない |
有効逆流弁口面積 (EROA) cm2 | 0.2以下 | 0.2-0.39 | 0.4以上 | 機能性MRの評価には向かない |
逆流量 ml | 30以下 | 30-59 | 60以上 | 機能性MRの評価には向かない |
逆流率 % | 30以下 | 30-49 | 50以上 | AR合併には向かない |
・縮流部幅とは、逆流ジェットの大きさを示すため、大きいほど重症であることを示します
・有効逆流弁口面積、逆流量とは、僧帽弁閉鎖不全症の重症度を示す、絶対的な指標です
弁の全体から逆流しているか、部分的に逆流しているかを示す値であり、
大きいほど、逆流している面積、量が大きいことを示します
手術適応
僧帽弁閉鎖不全症の手術適応の図にも示した通り、
症状がある場合は低左心機能(EF:30以下)で手術を検討します
症状がなくても、低左心機能(EF60%以下または、LVDs:左室収縮末期径40mm以上)が目安でしょう
僧帽弁狭窄症まとめ
・慢性的な原因:リウマチ熱、動脈硬化、拡張型心筋症など
・急性の原因:急性心筋梗塞による乳頭筋断裂、感染性心内膜炎 →緊急手術も考慮
・見た目の評価(定性評価)でカラードップラーから逆流の重症度を評価する
・定量評価逆流弁口面積 (EROA) が0.4cm2以上、逆流量が60ml以上で重症と評価
・症状がある場合は低左心機能(EF:30以下)で手術検討
・症状がなくても、低左心機能(EF60%以下または、LVDs:左室収縮末期径40mm以上)で手術
大動脈弁狭窄症
原因 | 病態生理 |
・リウマチ性 ・動脈硬化性 ・先天性 | 大動脈弁の狭小化 → 左室流出路の駆出障害 → 左室圧負荷 + 心拍出量の制限 → 低心拍出による失神、左心不全、狭心痛 |
大動脈弁狭窄症の原因の80%は、加齢による弁の硬化です
先天性やリウマチ性の方はほとんどいないようです
重症度評価
重症度は心エコーで評価します
軽症 | 中等症 | 重症 | 超重症 | |
大動脈弁最大血流速度( V max) m/s | 2.6-2.9 | 3.0-3.9 | 4.0以上 | 5.0以上 |
平均圧較差(mPG) mmHg | 20未満 | 20-39 | 40以上 | 60以上 |
大動脈弁口面積(AVA) cm2 | 1.5以上 | 1.5-1.0 | 1.0未満 | 0.6未満 |
大動脈弁最大血流速度 Vmaxは、狭くなった大動脈弁口を血流が通ると流速が速くなるため、
大きくなるほど重症度が高まります
平均圧較差 mPG は、狭くなった大動脈弁口を血流が通ると、左室と大動脈で圧差が大きくなるため、
大きくなるほど重症度が高まります
最後に、大動脈弁口面積 AVAは、その名の通り、弁口の面積であり、狭い方が重症度が高まります
かなりややこしいですが、端的にまとめると、
弁口面積AVAが1.0cm2未満か否かで、重症化どうかを判別します
その後、血流速度Vmax40m/s以上、圧較差40mmHg以上か否かで、
低圧較差ASか、高圧較差ASかを判別します
手術適応
重症ASで有症状であれば、基本的に手術を選択します
基本的には開心術で弁置換術を検討しますが、
高齢化に伴い合併症や臓器障害による開心術不適応症例には、
経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)を選択します
大動脈弁狭窄症まとめ
・大動脈弁狭窄症の原因の80%は、加齢による弁の硬化
・弁口面積AVAが1.0cm2未満か否かで、重症化どうかを判別
・血流速度Vmax40m/s以上、圧較差40mmHg以上か否かで、低圧較差 or 高圧較差を判別
・重症AS + 有症状で、開心術での弁置換術が適応
・高齢化などによる開心術不適応症例には、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)を選択
大動脈弁閉鎖不全症
原因 | 病態生理 |
慢性 ・リウマチ性 ・動脈硬化性 急性 ・感染性心内膜炎 ・外傷 ・大動脈解離 先天性 ・大動脈弁輪拡張症(marfan症候群) ・大動脈炎症候群 ・Valsalva動脈瘤 ・ニ尖、四尖弁 | 大動脈弁の閉鎖不全 →拡張期に大動脈から左室への逆流 →左室拡大 →心機能低下 →左心不全症状 →右心不全症状 →心拍出量低下・ショック |
重症度評価
大動脈弁閉鎖不全症の重症度評価は、僧帽弁閉鎖不全症とは違って簡単ではありません
カラードップラーでの定性評価(見た目の評価)と定量評価(数字で評価)を併用して
重症度を把握することが望ましいです
軽症 | 中等症 | 重症 | |
有効逆流弁口面積(ERAO) cm2 | 0.10以下 | 0.10-0.29 | 0.3以上 |
逆流量 ml | 30未満 | 30-49 | 50以上 |
縮流部(VC)幅 cm | 0.3未満 | 0.3-0.6 | 0.6以上 |
言葉の意味は、僧帽弁閉鎖不全症の章でも解説しています
しかし、僧帽弁閉鎖不全症よりも、複合的な評価から重症度を判断するため、
試験には出しづらい疾患かもしれませんね
手術適応
急性の大動脈弁閉鎖不全症は薬剤による心不全コントロールができない場合は
緊急手術の適応となります
一方、慢性の場合は、症状あり
症状がなくても以下の低心機能であれば手術適応となります
・EF:50%未満
・左室収縮末期径(LVDs):45mm以上
・左室拡張末期径(LVDd):65mm以上
大動脈弁閉鎖不全症まとめ
・原因は慢性と急性と先天性に分けられる
・重症度評価は僧帽弁のように単独で評価するべき指標はなく、総合的に判断する
・手術適応は、心不全コントロールが難しければ緊急手術が適応される
慢性期の手術適応は、症状があれば適応がある
症状がなくても低心機能(EF:50%未満、LVDs:45mm以上、LVDd:65mm以上)で検討する
三尖弁狭窄症・三尖弁閉鎖不全症・肺動脈弁閉鎖不全症
上記の疾患については過去問でもほとんど出題されていません
臨床で出会うこともありますが、大動脈弁・僧帽弁と比較すると、頻度は劣ります
今回は、「過去問を中心に」をコンセプトとしていますので、割愛させていただきます
以上、参考になれば幸いです
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