集中治療室ではたくさんの医療機器を使用した治療が行われます
そこで心配になるのが医療費、入院費です
こんなに治療したら一体いくら払うことになるのでしょうか
払えない時はどうしたらいい?
最初に払って、その後返ってくるの?
そんなICU、集中治療室での医療費の疑問にお答えします
集中治療室の医療費は1日あたり100万円かかることも
まずは集中治療室では、特定集中治療加算1の場合、入院基本料: 142,180円/日がかかります
ここから、使った医療機器によってどんどん医療費が追加されていきます
例えば、人工呼吸器:約50,000円/日
コロナで有名になったエクモ(体外型膜型人工肺,ECMO):約204,000円/日
人工透析:80,000円/日
さらに、検査や治療費で考えうるものが、
医学管理料: 呼吸ケアチームや栄養サポートチームなどの専門家が関わると加算(数千円〜)
検査料: 毎日の血液検査、レントゲン、CT、エコーなど。(数万円)
投薬・注射料: 大量の抗生剤、昇圧剤、鎮静剤、血液製剤など(数万円)
処置料: 中心静脈カテーテルの挿入・管理、気管切開など。(数万円)
リハビリテーション加算:5000円/日
これ以外にも様々な治療費がかかります
簡単に趣味レーションをしても、1日50万円〜100万円近くかかっても全く不思議ではありません
ICUの入院が10日になることも普通のことですから、総額1000万円になることもあります
それだけ、多くの医療資源、人員を割いて治療に当たっているということですね
しかし、仮に100万円/日かかっても、我々が負担するのはその3割(高齢者の場合2割)です
また後に紹介する高額療養費制度を使えば、1ヶ月の自己負担上限額は約9万円〜20万円程度(標準的な所得の場合)になります
これなら安心して治療にあたれますね
集中治療室の医療費は高額療養費制度が適応できる
いくら3割負担になったとしても、50万円/日で10日入院すれば、500万円の3割、150万円です
高額な医療費を払えずに、命を諦めてしまうこともある額ですよね
そういうった医療を受けられる権利を保証している制度が、高額療養費制度です
高額療養費制度とは、医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月(歴月:1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する制度です
この制度を使うためには、普段払っている、社会保険料の滞納がないことが条件です
会社員の方はかなりの額が給料から天引きされていますし、自営業の方も支払っていると思います
社会保険料をきちんと払っている人のみが受けられる、ありがたい制度ですね
高額療養費制度をきちんと適応するための手続き
高額療養費制度の恩恵を受ける方法は、主に2つあります。
方法A:後から払い戻しを受ける(償還払い)
- 手順:
- 病院の窓口で、いったん医療費の自己負担分(通常は3割)を全額支払います。
- 支払った医療費が自己負担限度額を超えた場合、数ヶ月後(通常3〜4ヶ月後)に、ご自身が加入している健康保険組合や協会けんぽから**「高額療養費支給申請書」**という書類が自動的に送られてきます。
- その申請書に必要事項を記入し、返送します。
- 申請後、1〜2ヶ月で指定した口座に限度額を超えた分のお金が払い戻されます。
- 特徴:
- 何もしなくても案内が来るので、申請し忘れる心配が少ないです。
- ただし、一時的に高額な医療費を立て替える必要があるため、金銭的な負担が大きいのがデメリットです。
方法B:窓口での支払いを限度額までにする(限度額適用認定証)

- 手順:
- 入院や手術の予定が決まったら、事前にご自身が加入している健康保険組合や協会けんぽに連絡し、**「限度額適用認定証」**の交付を申請します。
- 数日から1週間程度で「限度額適用認定証」が郵送されてきます。
- 入院時に、その認定証を病院の窓口に提示します。
- これにより、退院時の窓口での支払いが、最初から自己負担限度額までで済みます。限度額を超えた分は、病院が直接保険者に請求してくれます。
- 特徴:
- 窓口での支払いが少なくて済むため、一時的な金銭的負担が大幅に軽減されます。これが最大のメリットです。
- 事前の申請が必要なため、急な入院などの場合は間に合わないことがあります。(※マイナンバーカードを健康保険証として利用できる医療機関では、この認定証がなくても限度額までの支払いが可能になってきています)
高額な医療費がかかることが分かっている場合は、事前に「限度額適用認定証」を申請しておくと、一時的に高額な医療費を払う必要もなくスムーズ
社会保険料を払っているかを確認する方法
社会保険料は会社員であれば給料から天引きされているのであまり心配はいりません
健康保険証を持参の上、病院に提出してください
個人事業主の方は以下の方法で確認するのが良いでしょう
健康保険証の確認(最も簡単)
手元に有効期限内の健康保険証があれば、それが現在、公的医療保険に加入している何よりの証明になります。保険証が使えるということは、保険料が支払われている(または支払う義務がある)状態です。

給与明細の確認
会社員の方であれば、毎月の給与明細に**「健康保険料」や「厚生年金保険料」**といった項目があり、金額が記載されているはずです。これが天引きされていれば、会社を通じてきちんと保険料が納付されています。
ねんきん定期便の確認
年に一度、日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」には、厚生年金保険料の納付状況が記載されています。健康保険料と厚生年金保険料は基本的にセットで納付されるため、これが納付済みになっていれば、社会保険料は支払われていると判断できます。
日本年金機構をチェック
【最終手段】加入している保険者への問い合わせ
どうしても不安な場合や、保険料の滞納がないかなどを正確に確認したい場合は、ご自身の健康保険証に記載されている**「保険者名称」(例:全国健康保険協会 〇〇支部、〇〇健康保険組合など)**に直接電話して問い合わせるのが最も確実です。
集中治療室でも食費は自己負担
最後に食費についてです
一食あたり490円 × 3食 = 1,470円/日と診療報酬で定められています
高額療養費制度に当てはまらないような数日の入院では、3割負担が適応されます
一方、高額療養費制度に当てはまる場合は、食費は含まれません
つまり、10日入院して1000万円かかったが、高額療養費制度で自己負担は15万円になった
その場合、高額療養費制度で減免された15万円に、食費1470円×10日間=14,700円 を追加します
150,000+14,700 = 164,700円 があなたの負担額となります
食費は家にいてもかかる費用ですよね、しかも一食490円なら安い方です
集中治療室に月をまたいで入院した時の医療費は?
最後に、月またぎの場合を細くしておきます
高額療養費制度は1ヶ月ごとの申請となります
つまり、1月26日〜2月4日までの10日間をICUで過ごした場合と、1月1日〜1月10日までの10日間をICUで過ごした場合とでは、全く異なる自己負担額となります
1月26日〜1月31日の5日間で高度療養費制度を適応して、およそ9万円〜20万円程度を支払います
そして2月分として、2月1日〜2月5日におよそ9万円〜20万円程度を支払います
集中治療室に入る日なんてほぼ選ぶことはできませんが、大きな手術を控えている場合は、月初に入院して、月末までに退院することができれば、最も安く入院費を済ませることができます
ただ、なるべく早く手術を行なった方が良い場合のほうが多いと思いますので、お金のことだけで入院する日程を選ばないことをお勧めします
高度療養費制度は月毎の申請であり、月をまたがない入院にできれば理想
一方、手術日程をお金のことだけで選ぶことは適切ではなく、総合的に判断した方が良い
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