「血ガスの紙を渡されたけど、どこから見ればいいのか分からない」
私も最初はそうでした。数字が10個以上並んでいて、どれが大事なのかも分からない。とりあえずPaO₂とSpO₂だけ見て、あとは飛ばしていました
でも血液ガスは、見る順番さえ決めてしまえば、誰でも同じ結論にたどり着けます。センスはいりません。この記事では、私が今も毎日使っている4ステップをそのまま書きます
呼吸療法認定士の試験でも、血液ガスの解釈は12ある講義項目の1番目です。臨床でも試験でも、ここが土台になります
血ガスが読めると、臨床が変わります
私も最初はPaO₂しか見ていませんでした。順番を決めてから、患者さんの状態を数字で説明できるようになりました。
呼吸療法認定士の試験対策アプリを作りました。全8章315問、血液ガスの解釈も1章から出てきます。インストール不要で、スマホのブラウザでそのまま解けます。
※ デモ版は第1章の10問のみ
まず正常値を押さえる
この6つだけ覚えれば足ります
| 項目 | 正常値 | 意味 |
|---|---|---|
| pH | 7.35 〜 7.45 | 体が酸性に傾いているか、アルカリ性に傾いているか |
| PaCO₂ | 35 〜 45 mmHg | 呼吸性の要素。肺が動かせる |
| HCO₃⁻ | 22 〜 26 mEq/L | 代謝性の要素。腎臓が動かす |
| PaO₂ | 80 〜 100 mmHg(室内気) | 酸素化。ここは酸塩基とは別の話 |
| BE | −2 〜 +2 | 塩基の過不足。HCO₃⁻とほぼ連動する |
| SaO₂ | 95 〜 98% | 動脈血の酸素飽和度 |
ポイントは、PaCO₂は肺、HCO₃⁻は腎臓という担当分けです。この2つが、pHを正常に戻そうとして綱引きをしている。血液ガスの解釈は、ほぼこの綱引きを読む作業です
4ステップで読む
STEP 1 pHを見る。酸性かアルカリ性か
まずpHだけ見ます。7.35未満ならアシデミア(酸性)、7.45を超えていればアルカレミア(アルカリ性)。
正常範囲でも安心はできません。7.35〜7.45に収まっていても、後で見るPaCO₂とHCO₃⁻が両方とも異常なら、代償が効いているだけの状態だからです。
STEP 2 原因は呼吸性か、代謝性か
次にPaCO₂とHCO₃⁻を見て、pHの向きと一致しているほうが原因です。
・pHが下がっていてPaCO₂が高い → 呼吸性アシドーシス
・pHが下がっていてHCO₃⁻が低い → 代謝性アシドーシス
・pHが上がっていてPaCO₂が低い → 呼吸性アルカローシス
・pHが上がっていてHCO₃⁻が高い → 代謝性アルカローシス
覚え方は単純で、CO₂は酸、HCO₃⁻はアルカリ。CO₂が溜まれば酸性に、HCO₃⁻が増えればアルカリ性に傾きます。
STEP 3 代償が働いているかを見る
体はpHを正常に戻そうとします。呼吸性の異常には腎臓が、代謝性の異常には肺が代償します。
・呼吸性アシドーシス → 腎臓がHCO₃⁻を溜める(ゆっくり、数日かかる)
・代謝性アシドーシス → 肺が換気を増やしてCO₂を飛ばす(速い、数分〜数時間)
ここで大事なのが、代償は行きすぎないということです。代償だけでpHが正常を通り越して反対側に振れることはありません。もし振れていたら、それは代償ではなくもう1つ別の異常が隠れているということです。
STEP 4 酸素化を見る
ここまでは酸塩基の話で、酸素化はまったく別の軸です。最後にPaO₂を見ます。
室内気でPaO₂が60 mmHg未満なら呼吸不全。そのうえでPaCO₂が45 mmHg以上ならII型、正常ならI型です。
酸素を投与している患者ではPaO₂の値だけでは評価できないので、P/F比を使います。PaO₂ ÷ FiO₂ で計算します。
実際に読んでみる
4ステップを、よく出会う4つのパターンで動かしてみます
ケース1 COPDの患者さん(安定期)
pH 7.38 PaCO₂ 60 mmHg HCO₃⁻ 34 mEq/L PaO₂ 65 mmHg(室内気)
読み方
STEP1:pH 7.38は正常範囲。でも安心しない
STEP2:PaCO₂が高い(酸性方向)、HCO₃⁻も高い(アルカリ方向)。両方とも異常
STEP3:慢性呼吸性アシドーシスに、腎臓の代償が効いてpHが正常に戻った状態。HCO₃⁻が34まで上がるには数日かかるので、慢性だと分かる
STEP4:PaO₂ 65でPaCO₂ 60なので、II型呼吸不全
この人は「悪い」のではなく「この状態で安定している」。CO₂が高いこと自体が問題なのではなく、pHが動いたときが問題です
ケース2 同じCOPDの患者さんが、翌日こうなった
pH 7.24 PaCO₂ 78 mmHg HCO₃⁻ 33 mEq/L PaO₂ 52 mmHg(酸素2 L/分)
読み方
STEP1:pH 7.24はアシデミア
STEP2:PaCO₂が78とさらに上昇。呼吸性アシドーシス
STEP3:HCO₃⁻は33で昨日とほぼ同じ。腎臓の代償が追いついていない=急性の変化
STEP4:酸素を吸っているのにPaO₂ 52
ケース1と比べると、HCO₃⁻はほとんど動いていないのにpHだけが落ちている。これが急性増悪のサインです。同じ「CO₂が高い」でも、意味がまったく違います
ケース3 術後、痛みで浅く速い呼吸をしている
pH 7.50 PaCO₂ 28 mmHg HCO₃⁻ 23 mEq/L PaO₂ 88 mmHg
読み方
STEP1:pH 7.50はアルカレミア
STEP2:PaCO₂が低い(アルカリ方向)。呼吸性アルカローシス
STEP3:HCO₃⁻は23で正常。代償がまだ始まっていない=急性
STEP4:酸素化は保たれている
過換気です。痛みや不安が原因のことが多いので、呼吸そのものより原因を取りにいく。鎮痛が入っただけで数字が戻ることもあります
ケース4 糖尿病でぐったりしている
pH 7.18 PaCO₂ 22 mmHg HCO₃⁻ 8 mEq/L PaO₂ 105 mmHg Na 138 Cl 100
読み方
STEP1:pH 7.18は強いアシデミア
STEP2:HCO₃⁻が8と著しく低い。代謝性アシドーシス
STEP3:PaCO₂が22まで下がっている=肺が必死に代償している。速く深い呼吸(クスマウル呼吸)として見えます
STEP4:酸素化は問題なし
アニオンギャップ = 138 −(100 + 8)= 30。正常の12±2を大きく超えているので、酸が増えるタイプ。糖尿病性ケトアシドーシスを疑います
アニオンギャップを1つ足すと精度が上がる
代謝性アシドーシスを見つけたときだけ、もう1つ計算します
アニオンギャップ
AG = Na⁺ −(Cl⁻ + HCO₃⁻) 正常 12 ± 2 mEq/L
AGが開いていれば「酸が増えた」。乳酸アシドーシス、ケトアシドーシス、腎不全、中毒などです
AGが正常なら「HCO₃⁻が失われた」。下痢や尿細管性アシドーシスなどです
同じ代謝性アシドーシスでも、原因の方向がまったく変わります。ここまで見ておくと、カルテを読んだときに話が繋がります
代償の目安
試験で問われるのはここまでですが、実際に代償が「妥当な範囲か」を数字で確認する式もあります
| 一次性の異常 | 代償の目安 |
|---|---|
| 代謝性アシドーシス | 予測PaCO₂ = 1.5 × HCO₃⁻ + 8 ± 2 |
| 代謝性アルカローシス | HCO₃⁻が1 mEq/L上がるごとに PaCO₂ が約0.7 mmHg上昇 |
| 呼吸性アシドーシス(急性) | PaCO₂ 10 mmHg上昇ごとに HCO₃⁻ が約1 mEq/L上昇 |
| 呼吸性アシドーシス(慢性) | PaCO₂ 10 mmHg上昇ごとに HCO₃⁻ が約3.5〜4 mEq/L上昇 |
| 呼吸性アルカローシス(急性) | PaCO₂ 10 mmHg低下ごとに HCO₃⁻ が約2 mEq/L低下 |
| 呼吸性アルカローシス(慢性) | PaCO₂ 10 mmHg低下ごとに HCO₃⁻ が約5 mEq/L低下 |
急性と慢性で数字が違うのが大事なところです。HCO₃⁻の動き方を見れば、いつからその状態なのかが推測できる。ケース1とケース2の違いは、まさにこれでした
理学療法士が血ガスから読むこと
ここからは、試験ではなく臨床の話です。私が血液ガスを見るのは、今日この人を動かしていいのかを判断するためです
見ているのは、値そのものより前回からどう動いたかです。ケース1とケース2のように、同じ「CO₂が高い」でも、pHが動いているかどうかで意味が正反対になります
pHが落ちてきているなら、その日は攻めない。CO₂が高くてもpHが保たれていて、前回と数字が変わっていないなら、いつもどおり進めます。CO₂の絶対値だけを見て怖がると、動かせる人まで寝かせてしまいます
もうひとつ、II型呼吸不全の患者さんに酸素を上げすぎないこと。低酸素が呼吸のドライブになっている人に高濃度酸素を入れると、換気が落ちてCO₂がさらに溜まります。COPDの急性増悪でSpO₂の目標を88〜92%に置くのは、このためです
離床の可否は施設ごとに基準があります。ここに書いたのは考え方であって、実際の判断は必ず主治医と施設の基準に従ってください
覚えることは、これだけ
| やること | 中身 |
|---|---|
| STEP1 | pHを見る。7.35未満で酸性、7.45超でアルカリ性 |
| STEP2 | pHの向きと一致するほうが原因(CO₂は酸、HCO₃⁻はアルカリ) |
| STEP3 | 代償を見る。行きすぎていたら別の異常が隠れている |
| STEP4 | 酸素化を見る。PaO₂ 60未満で呼吸不全、PaCO₂ 45以上でII型 |
| +α | 代謝性アシドーシスならアニオンギャップ(正常12±2) |
順番を固定するのが、いちばんのコツです。毎回同じ順番で見れば、見落としません。慣れれば10秒で終わります
試験ではこう問われます
呼吸療法認定士では、定義と数値をそのまま聞いてくる問題が土台になります。アプリの第1章から1問置いておきます
Q. 呼吸不全の定義として正しいのはどれか。
1. 室内気吸入時のPaO₂が70 mmHg未満
2. 室内気吸入時のPaO₂が60 mmHg未満
3. 室内気吸入時のPaCO₂が40 mmHg超
4. SaO₂が95%未満
5. SpO₂が90%未満
答え:2
呼吸不全は「室内気吸入時のPaO₂が60 mmHg未満となる呼吸障害、またはそれに相当する呼吸障害を呈する状態」と定義されます。PaCO₂が正常なものをI型、45 mmHg以上のものをII型に分類します。
A-aDO₂やP/F比の計算も、血液ガスと一緒に問われます。公式は別記事にまとめてあります
→ 呼吸療法認定士の計算問題まとめ(A-aDO₂・P/F比・換気量)
出典
本記事の正常値・代償の目安・アニオンギャップは、呼吸療法および酸塩基平衡の標準的な成書と、3学会合同呼吸療法認定士 認定講習会テキストの内容に基づいて記載しています。
試験範囲としての位置づけは公益財団法人医療機器センターの公表資料によります。
・第31回3学会合同呼吸療法認定士 認定講習会及び認定試験
基準値は測定機器や施設によって幅があります。臨床判断は必ず主治医および施設の基準に従ってください。
著者:こたち(りよたろ)。3学会合同呼吸療法認定士/認定理学療法士(呼吸器)/心臓リハビリテーション指導士/腎臓リハビリテーション指導士。急性期病院のICUで13年、呼吸療法の現場にいます。
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読めるようになったら、次は解いてみてください
血液ガスの解釈は、呼吸療法認定士の講義12項目の1番目です。臨床で読めることと、試験で選べることは、やっぱり少し違います。
全8章315問の呼吸療法認定士 試験対策アプリを作りました。1問ずつ解説つきで、間違えた問題だけあとから復習できます。買い切り1,800円です。
※ デモ版は第1章の10問のみ


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