「カプノの波形、見てはいるけど正直よく分からない」
私も長いことそうでした。数字のEtCO₂だけ見て、波形は流していました。でも波形は数字より先に異常を教えてくれます。形が変わるのは、数字が動く前だからです
この記事では、カプノグラムとパルスオキシメータを図で整理します。呼吸療法認定士の講義12項目でいえば11番目の「人工呼吸中のモニター」にあたるところで、試験でも臨床でも配点の高い領域です
モニターは試験でも独立した項目です
講義12項目の11番目が「人工呼吸中のモニター」。波形の意味を問う問題が繰り返し出ます。
全8章315問の呼吸療法認定士 試験対策アプリを作りました。インストール不要で、スマホのブラウザでそのまま解けます。
※ デモ版は第1章の10問のみ
カプノグラムの正常波形
まず正常な形を頭に入れます。ここが基準になるので、異常を覚えるより先です
4つの相に分かれます
| 相 | 何が起きているか |
|---|---|
| I相 | 呼気の始まり。死腔のガスが出てくるので、CO₂はまだゼロ |
| II相 | 肺胞のガスが混ざり始めて、一気に立ち上がる |
| III相 | プラトー。肺胞のガスが出続けている。ここがほぼ水平なのが正常 |
| 0相 | 吸気が始まり、CO₂が一気にゼロへ落ちる |
EtCO₂として読むのは、III相の終わりの値です。正常は35〜45 mmHg。ちょうど動脈血のPaCO₂と同じ範囲になります
EtCO₂とPaCO₂の関係
正常なら PaCO₂ − EtCO₂ = 2〜5 mmHg(EtCO₂のほうが少し低い)
この差が開いてきたら、死腔が増えたということ。肺塞栓、心拍出量の低下、過膨張などを疑います。差が開くこと自体が情報です。
形が変われば、原因が絞れる
シャークフィン
III相が水平にならず、右上がりに登り続ける形です。呼気がスムーズに出ていないときに出ます。COPDや喘息の気流制限が典型ですが、回路のねじれや気管チューブの閉塞でも同じ形になります。患者さんの病気だと決めつける前に、まず回路を見てください
切れ込み(カーブレクレフト)
プラトーの途中に、下向きのくぼみが入ります。鎮静下の患者さんに自発呼吸が出てきたサインです。人工呼吸器と患者さんが噛み合っていないことを示すので、鎮静や設定を見直す材料になります
ベースラインが上がる
吸気時にCO₂がゼロまで戻らない形です。吐いたCO₂をもう一度吸っている(再呼吸)ということ。呼気弁の故障や、麻酔器のソーダライム消耗などが原因です。これは器械側の問題なので、すぐ対応が要ります
カプノグラフィが本当に強いのは、この2つ
波形の分類より、実務でこれを知っているかどうかが大きいです
1. 気管挿管の位置確認
チューブが気管に入っていれば波形が出ますが、食道に入っていれば波形は出ません。胸の上がりや聴診より確実で、挿管確認の標準的な方法とされています
2. 心肺蘇生の質の指標
胸骨圧迫で血液が肺に流れるからCO₂が返ってきます。つまりEtCO₂は圧迫の効果をそのまま映します。10 mmHgを下回るようなら圧迫が浅いか速すぎる可能性があり、逆に急にEtCO₂が跳ね上がったら心拍が戻ったサインです
この2つは、換気ではなく循環を見ている使い方です。CO₂が肺まで運ばれてこなければ、いくら換気してもEtCO₂は出ない。カプノは呼吸のモニターであると同時に、循環のモニターでもあります
パルスオキシメータは何を測っているのか
指に挟むだけでSpO₂が出るので、つい万能に見えます。でも測っているのは酸素化だけです。ここを外すと危ない場面があります
原理は単純で、赤色光(660 nm)と赤外光(940 nm)の吸われ方の比を見ています。酸素と結合したヘモグロビンと、していないヘモグロビンでは光の吸い方が違う。その比率から飽和度を出しています
大事なのは拍動している成分だけを取り出している点です。だから脈が触れない、末梢が冷たい、血圧が低いといった状況では、そもそも値が出ないか、当てになりません
SpO₂ 90%の意味を、曲線で理解する
SpO₂を見るときに絶対に頭に入れておきたいのが、酸素解離曲線です
曲線はS字を描いています。PaO₂ 60 mmHgでSaO₂ 90%。ここが呼吸不全のラインと一致しているのは偶然ではありません
注目してほしいのは90%より下の急な傾きです。SpO₂が98%から95%に下がっても、PaO₂は80台までしか落ちていません。ところが90%を切ると、あとはPaO₂が坂を転げるように落ちます。SpO₂ 88%と85%の差は、数字以上に大きい
だから「まだ88%あるから大丈夫」ではなく、90%を切った時点で、すでに崖の上にいると考えます
右方移動と左方移動
曲線は固定ではなく、条件で左右にずれます。試験でよく問われるところです
右方移動=組織で酸素を離しやすい
体温が上がる、PaCO₂が上がる、pHが下がる(アシドーシス)、2,3-DPGが増える。運動中の筋肉で起きていることを思い浮かべると覚えやすいです。熱くて、CO₂が出て、酸性に傾いている。だからそこで酸素を手放す。理にかなっています
左方移動=酸素を離しにくい
右方の逆に加えて、CO中毒と胎児ヘモグロビンです。肺では酸素を掴みやすくなりますが、組織で放しません
図Cで確認しておきたいこと
同じ PaO₂ 60 mmHg でも、正常なら SaO₂ 90%、右方移動していれば 約80%。
つまり発熱してアシドーシスに傾いている患者さんでは、同じPaO₂でもSpO₂は低く出ます。SpO₂だけを見て「悪化した」と判断する前に、体温と血液ガスを確認したい理由がこれです。
SpO₂で見落とすもの
パルスオキシメータの限界は、試験でも臨床でも繰り返し問われます
| 場面 | 何が起きるか |
|---|---|
| 一酸化炭素中毒 | COヘモグロビンを酸素化ヘモグロビンと区別できず、高く出る。100%でも危険 |
| メトヘモグロビン血症 | 実際の値と関係なく85%前後に張りつく |
| 末梢循環不全・低血圧 | 拍動が拾えず、値が出ないか不正確 |
| 体動・シバリング | ノイズで不正確 |
| マニキュア・濃い色素 | 光が透過せず低く出ることがある |
| 貧血 | SpO₂は保たれるが、酸素運搬量は落ちている |
| 酸素投与中 | 酸素化は保てても、CO₂貯留を見逃す |
最後の2つが特に大事です。SpO₂は酸素化の指標であって、換気の指標ではありません。酸素を投与していればSpO₂は保てるので、その裏でCO₂が溜まっていても気づけない。だからII型呼吸不全の患者さんでは、SpO₂ではなく血液ガスとカプノで換気を見る必要があります
理学療法士が運動中に見ているもの
ここからは現場の話です。私が離床や歩行練習のときに見ているのは、SpO₂の値そのものより、下がり方と戻り方です
同じ「90%まで低下」でも、歩き出して30秒で落ちるのか、5分歩いて落ちるのかでは意味が違います。前者は運動そのものが過負荷、後者は持久力の問題です。次にどうするかが変わります
戻り方も同じくらい大事です。休んで1分で戻る人と、5分かかる人。回復に時間がかかるほど、余力がないということなので、負荷の上げ方を慎重にします
図Cを見返すと、90%を下限にする理由がはっきりします。90%より下は坂が急なので、そこから先は一気に落ちる。だから90%で止めるのは安全域を取っているというより、崖の手前で止まっているという感覚に近いです
発熱している患者さんでSpO₂が低めに出るのも、曲線が右にずれているからだと分かっていれば、慌てずに済みます
中止基準は施設ごとに決まっています。ここに書いたのは考え方であって、実際の判断は必ず主治医と施設の基準に従ってください
まとめ
| モニター | 分かること | 分からないこと |
|---|---|---|
| カプノグラフィ | 換気、気道の状態、循環(心拍出量)、挿管の位置 | 酸素化 |
| パルスオキシメータ | 酸素化 | 換気(CO₂)、酸素運搬量、CO中毒 |
2つは補い合う関係です。SpO₂だけでも、EtCO₂だけでも足りない。両方あって、はじめて呼吸の全体が見えます
試験ではこう問われます
モニターの話とつながる問題を、アプリの第1章から1問置いておきます
Q. 呼吸調節において末梢化学受容器(頸動脈小体・大動脈小体)が主に感知するのはどれか。
1. PaO₂の低下
2. PaCO₂の上昇
3. pHの上昇
4. 気道内圧の変化
5. 体温の上昇
答え:1
末梢化学受容器はPaO₂の低下に反応して換気を増やします。PaCO₂とpHを主に感知するのは延髄の中枢化学受容器です。この違いが、II型呼吸不全の患者に高濃度酸素を入れると換気が落ちる(CO₂ナルコーシス)理由につながります。低酸素という換気のドライブを、酸素投与で取り去ってしまうからです。
NPPVやハイフローを使う場面でも、この考え方がそのまま効いてきます
出典
カプノグラフィおよびパルスオキシメトリの原理・波形の解釈・限界は、呼吸療法の標準的な成書および3学会合同呼吸療法認定士 認定講習会テキストの内容に基づいて記載しています。心肺蘇生時のEtCO₂の扱いは蘇生ガイドラインの記載によります。
試験範囲としての位置づけは公益財団法人医療機器センターの公表資料によります。
・第31回3学会合同呼吸療法認定士 認定講習会及び認定試験
図は解説のために作成した模式図です。基準値は機器や施設によって幅があります。臨床判断は必ず主治医および施設の基準に従ってください。
著者:こたち(りよたろ)。3学会合同呼吸療法認定士/認定理学療法士(呼吸器)/心臓リハビリテーション指導士/腎臓リハビリテーション指導士。急性期病院のICUで13年、呼吸療法の現場にいます。
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「人工呼吸中のモニター」は講義12項目の11番目。波形の意味、EtCO₂とPaCO₂の差、パルスオキシメータの限界まで、まとめて問われます。
全8章315問の呼吸療法認定士 試験対策アプリを作りました。1問ずつ解説つきで、間違えた問題だけあとから復習できます。買い切り1,800円です。
※ デモ版は第1章の10問のみ


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