カプノグラムとパルスオキシメータの読み方【図解】|波形で何が分かるか

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「カプノの波形、見てはいるけど正直よく分からない」

私も長いことそうでした。数字のEtCO₂だけ見て、波形は流していました。でも波形は数字より先に異常を教えてくれます。形が変わるのは、数字が動く前だからです

この記事では、カプノグラムとパルスオキシメータを図で整理します。呼吸療法認定士の講義12項目でいえば11番目の「人工呼吸中のモニター」にあたるところで、試験でも臨床でも配点の高い領域です

モニターは試験でも独立した項目です

講義12項目の11番目が「人工呼吸中のモニター」。波形の意味を問う問題が繰り返し出ます。

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カプノグラムの正常波形

まず正常な形を頭に入れます。ここが基準になるので、異常を覚えるより先です

正常 35〜45 mmHg504030200CO₂(mmHg)時間I相II相III相0相死腔ガス立ち上がりプラトー(肺胞ガス)吸気EtCO₂=ここの値
図A 正常なカプノグラム。EtCO₂はプラトーの終わりの値を読む

4つの相に分かれます

何が起きているか
I相呼気の始まり。死腔のガスが出てくるので、CO₂はまだゼロ
II相肺胞のガスが混ざり始めて、一気に立ち上がる
III相プラトー。肺胞のガスが出続けている。ここがほぼ水平なのが正常
0相吸気が始まり、CO₂が一気にゼロへ落ちる

EtCO₂として読むのは、III相の終わりの値です。正常は35〜45 mmHg。ちょうど動脈血のPaCO₂と同じ範囲になります

EtCO₂とPaCO₂の関係

正常なら PaCO₂ − EtCO₂ = 2〜5 mmHg(EtCO₂のほうが少し低い)

この差が開いてきたら、死腔が増えたということ。肺塞栓、心拍出量の低下、過膨張などを疑います。差が開くこと自体が情報です。

形が変われば、原因が絞れる

正常シャークフィン切れ込み(カーブレクレフト)ベースラインが上がるプラトーが水平閉塞性換気障害(COPD・喘息・回路のねじれ)自発呼吸が出てきた/同調していない再呼吸。呼気弁の異常やソーダライム消耗0に戻らない
図B 覚えておきたい3つの異常波形

シャークフィン
III相が水平にならず、右上がりに登り続ける形です。呼気がスムーズに出ていないときに出ます。COPDや喘息の気流制限が典型ですが、回路のねじれや気管チューブの閉塞でも同じ形になります。患者さんの病気だと決めつける前に、まず回路を見てください

切れ込み(カーブレクレフト)
プラトーの途中に、下向きのくぼみが入ります。鎮静下の患者さんに自発呼吸が出てきたサインです。人工呼吸器と患者さんが噛み合っていないことを示すので、鎮静や設定を見直す材料になります

ベースラインが上がる
吸気時にCO₂がゼロまで戻らない形です。吐いたCO₂をもう一度吸っている(再呼吸)ということ。呼気弁の故障や、麻酔器のソーダライム消耗などが原因です。これは器械側の問題なので、すぐ対応が要ります

カプノグラフィが本当に強いのは、この2つ

波形の分類より、実務でこれを知っているかどうかが大きいです

1. 気管挿管の位置確認
チューブが気管に入っていれば波形が出ますが、食道に入っていれば波形は出ません。胸の上がりや聴診より確実で、挿管確認の標準的な方法とされています

2. 心肺蘇生の質の指標
胸骨圧迫で血液が肺に流れるからCO₂が返ってきます。つまりEtCO₂は圧迫の効果をそのまま映します。10 mmHgを下回るようなら圧迫が浅いか速すぎる可能性があり、逆に急にEtCO₂が跳ね上がったら心拍が戻ったサインです

この2つは、換気ではなく循環を見ている使い方です。CO₂が肺まで運ばれてこなければ、いくら換気してもEtCO₂は出ない。カプノは呼吸のモニターであると同時に、循環のモニターでもあります

パルスオキシメータは何を測っているのか

指に挟むだけでSpO₂が出るので、つい万能に見えます。でも測っているのは酸素化だけです。ここを外すと危ない場面があります

原理は単純で、赤色光(660 nm)と赤外光(940 nm)の吸われ方の比を見ています。酸素と結合したヘモグロビンと、していないヘモグロビンでは光の吸い方が違う。その比率から飽和度を出しています

大事なのは拍動している成分だけを取り出している点です。だから脈が触れない、末梢が冷たい、血圧が低いといった状況では、そもそも値が出ないか、当てになりません

SpO₂ 90%の意味を、曲線で理解する

SpO₂を見るときに絶対に頭に入れておきたいのが、酸素解離曲線です

1007550250020406080100SaO₂(%)PaO₂(mmHg)PaO₂ 60 → SaO₂ 90%呼吸不全のライン右方移動なら約80%同じPaO₂ 60でもここまで下がるP50=27P50=36ここから左は急落する正常右方移動(酸素を離しやすい)左方移動(離しにくい)右方移動:体温↑・PaCO₂↑・pH↓(アシドーシス)・2,3-DPG↑左方移動:体温↓・PaCO₂↓・pH↑(アルカローシス)・2,3-DPG↓・CO中毒・胎児Hb
図C 酸素解離曲線。PaO₂ 60 = SaO₂ 90%。右方移動すると同じPaO₂でも飽和度は下がる

曲線はS字を描いています。PaO₂ 60 mmHgでSaO₂ 90%。ここが呼吸不全のラインと一致しているのは偶然ではありません

注目してほしいのは90%より下の急な傾きです。SpO₂が98%から95%に下がっても、PaO₂は80台までしか落ちていません。ところが90%を切ると、あとはPaO₂が坂を転げるように落ちます。SpO₂ 88%と85%の差は、数字以上に大きい

だから「まだ88%あるから大丈夫」ではなく、90%を切った時点で、すでに崖の上にいると考えます

右方移動と左方移動

曲線は固定ではなく、条件で左右にずれます。試験でよく問われるところです

右方移動=組織で酸素を離しやすい
体温が上がる、PaCO₂が上がる、pHが下がる(アシドーシス)、2,3-DPGが増える。運動中の筋肉で起きていることを思い浮かべると覚えやすいです。熱くて、CO₂が出て、酸性に傾いている。だからそこで酸素を手放す。理にかなっています

左方移動=酸素を離しにくい
右方の逆に加えて、CO中毒と胎児ヘモグロビンです。肺では酸素を掴みやすくなりますが、組織で放しません

図Cで確認しておきたいこと

同じ PaO₂ 60 mmHg でも、正常なら SaO₂ 90%、右方移動していれば 約80%

つまり発熱してアシドーシスに傾いている患者さんでは、同じPaO₂でもSpO₂は低く出ます。SpO₂だけを見て「悪化した」と判断する前に、体温と血液ガスを確認したい理由がこれです。

SpO₂で見落とすもの

パルスオキシメータの限界は、試験でも臨床でも繰り返し問われます

場面何が起きるか
一酸化炭素中毒COヘモグロビンを酸素化ヘモグロビンと区別できず、高く出る。100%でも危険
メトヘモグロビン血症実際の値と関係なく85%前後に張りつく
末梢循環不全・低血圧拍動が拾えず、値が出ないか不正確
体動・シバリングノイズで不正確
マニキュア・濃い色素光が透過せず低く出ることがある
貧血SpO₂は保たれるが、酸素運搬量は落ちている
酸素投与中酸素化は保てても、CO₂貯留を見逃す

最後の2つが特に大事です。SpO₂は酸素化の指標であって、換気の指標ではありません。酸素を投与していればSpO₂は保てるので、その裏でCO₂が溜まっていても気づけない。だからII型呼吸不全の患者さんでは、SpO₂ではなく血液ガスとカプノで換気を見る必要があります

血液ガスの読み方4ステップ

理学療法士が運動中に見ているもの

ここからは現場の話です。私が離床や歩行練習のときに見ているのは、SpO₂の値そのものより、下がり方と戻り方です

同じ「90%まで低下」でも、歩き出して30秒で落ちるのか、5分歩いて落ちるのかでは意味が違います。前者は運動そのものが過負荷、後者は持久力の問題です。次にどうするかが変わります

戻り方も同じくらい大事です。休んで1分で戻る人と、5分かかる人。回復に時間がかかるほど、余力がないということなので、負荷の上げ方を慎重にします

図Cを見返すと、90%を下限にする理由がはっきりします。90%より下は坂が急なので、そこから先は一気に落ちる。だから90%で止めるのは安全域を取っているというより、崖の手前で止まっているという感覚に近いです

発熱している患者さんでSpO₂が低めに出るのも、曲線が右にずれているからだと分かっていれば、慌てずに済みます

中止基準は施設ごとに決まっています。ここに書いたのは考え方であって、実際の判断は必ず主治医と施設の基準に従ってください

まとめ

モニター分かること分からないこと
カプノグラフィ換気、気道の状態、循環(心拍出量)、挿管の位置酸素化
パルスオキシメータ酸素化換気(CO₂)、酸素運搬量、CO中毒

2つは補い合う関係です。SpO₂だけでも、EtCO₂だけでも足りない。両方あって、はじめて呼吸の全体が見えます

試験ではこう問われます

モニターの話とつながる問題を、アプリの第1章から1問置いておきます

Q. 呼吸調節において末梢化学受容器(頸動脈小体・大動脈小体)が主に感知するのはどれか。

1. PaO₂の低下
2. PaCO₂の上昇
3. pHの上昇
4. 気道内圧の変化
5. 体温の上昇

答え:1

末梢化学受容器はPaO₂の低下に反応して換気を増やします。PaCO₂とpHを主に感知するのは延髄の中枢化学受容器です。この違いが、II型呼吸不全の患者に高濃度酸素を入れると換気が落ちる(CO₂ナルコーシス)理由につながります。低酸素という換気のドライブを、酸素投与で取り去ってしまうからです。

NPPVやハイフローを使う場面でも、この考え方がそのまま効いてきます

NPPVとハイフローの使い分け

出典

カプノグラフィおよびパルスオキシメトリの原理・波形の解釈・限界は、呼吸療法の標準的な成書および3学会合同呼吸療法認定士 認定講習会テキストの内容に基づいて記載しています。心肺蘇生時のEtCO₂の扱いは蘇生ガイドラインの記載によります。
試験範囲としての位置づけは公益財団法人医療機器センターの公表資料によります。
第31回3学会合同呼吸療法認定士 認定講習会及び認定試験
図は解説のために作成した模式図です。基準値は機器や施設によって幅があります。臨床判断は必ず主治医および施設の基準に従ってください

著者:こたち(りよたろ)。3学会合同呼吸療法認定士/認定理学療法士(呼吸器)/心臓リハビリテーション指導士/腎臓リハビリテーション指導士。急性期病院のICUで13年、呼吸療法の現場にいます。

波形が読めたら、次は問題で確かめてください

「人工呼吸中のモニター」は講義12項目の11番目。波形の意味、EtCO₂とPaCO₂の差、パルスオキシメータの限界まで、まとめて問われます。

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