「計算問題って、捨てても受かりますか?」
私が受験生のころ、いちばん知りたかったのがこれでした。範囲は広いし、公式は覚えられないし、後回しにしたくなりますよね
答えを先に書くと、計算問題こそ捨ててはいけないと思っています。理由は単純で、病態や薬の知識は「覚えていないと解けない」のに対して、計算は公式さえ覚えれば、その場で必ず答えが出るからです。運の要素がありません
しかも呼吸療法認定士の計算は、種類がそれほど多くありません。この記事にあるものを押さえておけば、本番で計算を落とすことはほぼなくなります
公式テキスト、何周しましたか?
私も2022年に受験しましたが、テキストを読むだけだと本番の選択肢で手が止まりました。読んで分かった気になるのと、選べるのは別物ですよね。
そこで、受験生のときに自分が欲しかったものを作りました。全8章315問の呼吸療法認定士 試験対策アプリです。インストール不要で、スマホのブラウザでそのまま解けます。
※ デモ版は第1章の10問のみ
① A-aDO₂(肺胞気-動脈血酸素分圧較差)
計算問題の中でいちばんよく出ます。まず肺胞気式でPAO₂を出して、そこからPaO₂を引くだけです
肺胞気式
PAO₂ = FiO₂ ×(大気圧 − 水蒸気圧)− PaCO₂ ÷ R
A-aDO₂ = PAO₂ − PaO₂
大気圧は760 mmHg、体温37℃での飽和水蒸気圧は47 mmHg、呼吸商Rは0.8。ここは定数なので覚えてしまいます
室内気(FiO₂ 0.21)なら、0.21 ×(760 − 47)= 149.7 になります。室内気ならPAO₂は「150 − PaCO₂ ÷ 0.8」と覚えておくと、本番で速いです
例題
室内気吸入下で、PaO₂ 70 mmHg、PaCO₂ 40 mmHgの患者のA-aDO₂を求めよ。
解き方
PAO₂ = 150 − 40 ÷ 0.8 = 150 − 50 = 100 mmHg
A-aDO₂ = 100 − 70 = 30 mmHg
正常値は若年者で5〜15 mmHg程度、加齢とともに開いていきます。目安としては「年齢 ÷ 4 + 4」で概算できます
この値が意味を持つのは、低酸素血症の原因を切り分けられる点です。A-aDO₂が正常なのに低酸素なら肺胞低換気か吸入酸素濃度の問題、A-aDO₂が開いていれば換気血流比不均等やシャント、拡散障害を疑う。この切り分けがそのまま問題になります
② P/F比
こちらは割り算だけです。ただし、FiO₂を小数で入れるところで間違える人が多いです
P/F比
P/F比 = PaO₂ ÷ FiO₂
例題
酸素マスクでFiO₂ 0.5、PaO₂ 90 mmHgのときのP/F比は。
解き方
P/F比 = 90 ÷ 0.5 = 180
ARDSの重症度分類(ベルリン定義)はP/F比で決まります。PEEPまたはCPAPが5 cmH₂O以上という条件つきです
| 重症度 | P/F比 |
|---|---|
| 軽症 | 200 超 300 以下 |
| 中等症 | 100 超 200 以下 |
| 重症 | 100 以下 |
先ほどの例題は180なので中等症です。数字だけでなく、どの区分に入るかまで聞かれるので、表ごと覚えたほうが早いです
鼻カニューレのようにFiO₂が確定しない device では、流量からの概算を使います。鼻カニューレは「0.20 + 0.04 × 流量(L/分)」。2 L/分なら0.28、5 L/分なら0.40という具合です
③ 換気量まわり(分時換気量・肺胞換気量・死腔)
ここは公式が3つ並びますが、意味さえ分かれば覚える必要はありません
換気量の3公式
分時換気量(VE)= 1回換気量(VT)× 呼吸数(RR)
肺胞換気量(VA)=(1回換気量 − 死腔量)× 呼吸数
解剖学的死腔 ≒ 2 mL/kg(成人でおよそ150 mL)
大事なのは、ガス交換に効いているのは肺胞換気量のほうだということです。同じ分時換気量でも、浅く速い呼吸は死腔ばかり換気していて効率が悪い。ここが問題になります
例題
1回換気量500 mL、呼吸数12回/分、死腔量150 mLのとき、分時換気量と肺胞換気量を求めよ。
解き方
分時換気量 = 500 × 12 = 6,000 mL/分 = 6 L/分
肺胞換気量 =(500 − 150)× 12 = 4,200 mL/分
例題
同じ分時換気量6 L/分を、1回換気量250 mL・呼吸数24回/分でまかなったら肺胞換気量はどうなるか。
解き方
(250 − 150)× 24 = 2,400 mL/分
分時換気量は同じ6 L/分なのに、肺胞換気量はほぼ半分に落ちます。浅く速い呼吸が非効率だというのは、この計算で説明できます
もうひとつ、PaCO₂は肺胞換気量に反比例します。肺胞換気量が半分になればPaCO₂は倍に近づく。CO₂が溜まっている患者を見たときに、まず換気量を疑う根拠がこれです
④ 予測体重(PBW)と肺保護換気
ARDSの1回換気量は「予測体重あたり6 mL」で設定します。実体重ではなく予測体重なのがポイントで、ここを実体重で計算させる引っかけが出ます
予測体重(PBW)
男性:50 + 0.91 ×(身長cm − 152.4)
女性:45.5 + 0.91 ×(身長cm − 152.4)
肺保護換気の1回換気量 = PBW × 6 mL/kg
例題
身長170 cmの男性。肺保護換気での1回換気量はおよそいくつか。
解き方
PBW = 50 + 0.91 ×(170 − 152.4)= 50 + 0.91 × 17.6 = 50 + 16.0 = 66.0 kg
1回換気量 = 66.0 × 6 = 約400 mL
身長170 cmの人の体重が90 kgでも、1回換気量は400 mLのままです。肺の大きさは身長で決まって体重では変わらない、という考え方が根っこにあります
⑤ コンプライアンスとドライビングプレッシャー
人工呼吸中のモニターの項目から出ます。プラトー圧を使うところが要注意です
静的コンプライアンスとドライビングプレッシャー
静的コンプライアンス = 1回換気量 ÷(プラトー圧 − PEEP)
ドライビングプレッシャー = プラトー圧 − PEEP
例題
1回換気量450 mL、プラトー圧25 cmH₂O、PEEP 10 cmH₂Oのときの静的コンプライアンスとドライビングプレッシャーは。
解き方
ドライビングプレッシャー = 25 − 10 = 15 cmH₂O
静的コンプライアンス = 450 ÷ 15 = 30 mL/cmH₂O
分母がピーク圧ではなくプラトー圧であることを必ず確認してください。ピーク圧は気道抵抗の影響を受けるので、肺の硬さを見るときには使えません
成人の静的コンプライアンスはおおむね50〜100 mL/cmH₂O。30まで落ちていれば、かなり硬い肺です。ドライビングプレッシャーは15 cmH₂O以下に抑えるのが目標とされています
⑥ 酸素ボンベの残量と使用可能時間
これは試験のためというより、リハビリで患者を連れて歩くなら必ず要る計算です。私は今でも毎日使っています
酸素ボンベ
残量(L)= 内容積(L)× 残圧(MPa)× 10
使用可能時間(分)= 残量(L)÷ 酸素流量(L/分)
例題
内容積3.4 Lのボンベ、残圧10 MPa、酸素流量3 L/分。あと何分もつか。
解き方
残量 = 3.4 × 10 × 10 = 340 L
使用可能時間 = 340 ÷ 3 = 約113分
安全をみて8割で見積もるなら約90分です
満充填は14.7 MPaで、3.4 Lのボンベなら約500 L入っている計算になります。歩行練習に出る前、この暗算ができるかどうかで安全性が変わります
⑦ 動脈血酸素含有量(CaO₂)
出題頻度は高くありませんが、酸素は大部分がヘモグロビンで運ばれることを示す式なので、意味を聞かれる形で出ます
動脈血酸素含有量
CaO₂ = 1.34 × Hb × SaO₂ + 0.003 × PaO₂ (mL/dL)
例題
Hb 12 g/dL、SaO₂ 96%、PaO₂ 80 mmHgのCaO₂は。
解き方
1.34 × 12 × 0.96 = 15.4
0.003 × 80 = 0.24
CaO₂ = 約15.7 mL/dL
溶存酸素の0.24に対して、ヘモグロビン結合分が15.4。99%近くをHbが運んでいるのが数字で分かります。だから貧血の患者はPaO₂が良くても酸素運搬量が足りない、という話につながります
まとめて確認できる公式一覧
| 項目 | 公式 |
|---|---|
| A-aDO₂ | PAO₂ − PaO₂(室内気なら PAO₂ = 150 − PaCO₂ ÷ 0.8) |
| P/F比 | PaO₂ ÷ FiO₂ |
| 分時換気量 | 1回換気量 × 呼吸数 |
| 肺胞換気量 | (1回換気量 − 死腔量)× 呼吸数 |
| 予測体重(男) | 50 + 0.91 ×(身長cm − 152.4) |
| 予測体重(女) | 45.5 + 0.91 ×(身長cm − 152.4) |
| 静的コンプライアンス | 1回換気量 ÷(プラトー圧 − PEEP) |
| ドライビングプレッシャー | プラトー圧 − PEEP |
| 酸素ボンベ残量 | 内容積(L)× 残圧(MPa)× 10 |
| ボンベ使用可能時間 | 残量(L)÷ 流量(L/分) |
| 動脈血酸素含有量 | 1.34 × Hb × SaO₂ + 0.003 × PaO₂ |
この11個です。多いように見えますが、丸暗記が必要なのは定数だけです。760、47、0.8、152.4、0.91、1.34。あとは意味から組み立てられます
本番での戦い方
試験は100問を2時間50分。1問あたり1分42秒です。計算問題はここで時間を食います
私がやったのは、計算問題は飛ばして最後にまとめて解くやり方でした。1問目から順番に解いていくと、計算で詰まったときに焦りが後ろまで引きずられます。先に知識問題を全部埋めて、残り時間を計算に全部使うほうが精神的に楽です
あとは単位です。mLとL、mmHgとcmH₂O、MPaとkPa。計算を間違える人の大半は、公式ではなく単位で落としています。選択肢に桁違いの数字が並んでいたら、まず単位を疑ってください
試験ではこう問われます
アプリの第1章から1問置いておきます。公式そのものではなく、意味を聞いてくるパターンです
Q. 肺胞換気量(VA)に関係する呼吸の指標はどれか。
1. 1回換気量 × 呼吸数
2. (1回換気量 − 死腔量)× 呼吸数
3. 機能的残気量 + 1回換気量
4. 予備吸気量 + 1回換気量
5. 全肺気量 − 残気量
答え:2
肺胞換気量 =(1回換気量 − 死腔量)× 呼吸数。解剖学的死腔(約150 mL)を差し引いた量が、実際にガス交換に関わっています。1は分時換気量なので、ここを選ばせる問題が多いです。
出典
試験形式(100問・2時間50分)は公益財団法人医療機器センターの公式サイトによります。
・第31回3学会合同呼吸療法認定士 認定講習会及び認定試験
各公式および基準値は認定講習会テキストおよび関連ガイドラインに基づいて記載しています。最新の数値は必ず公式テキストでご確認ください。
著者:こたち(りよたろ)。3学会合同呼吸療法認定士/認定理学療法士(呼吸器)/心臓リハビリテーション指導士/腎臓リハビリテーション指導士。急性期病院のICUで13年、呼吸療法の現場にいます。
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