「NPPVとハイフロー、どっちを使うんですか」
後輩によく聞かれます。どちらもマスクや鼻から酸素を入れる装置で、見た目は似ています。でもやっていることは根本的に違います
結論から書くと、見分ける軸は1本だけです。CO₂が溜まっているならNPPV、酸素化だけが問題ならハイフロー。これで9割の場面は説明がつきます
呼吸療法認定士の試験でも、NPPVは12ある講義項目のうち独立した1項目です。臨床でも試験でも避けて通れないので、ここで整理しておきます
NPPVは試験でも独立した1項目です
呼吸療法認定士の講義12項目のうち、8番目が「NPPVとその管理法」。それだけ独立して問われます。
全8章315問の呼吸療法認定士 試験対策アプリを作りました。インストール不要で、スマホのブラウザでそのまま解けます。
※ デモ版は第1章の10問のみ
ひとことで言うと
| NPPV | ハイフロー(HFNC) | |
|---|---|---|
| 正式には | 非侵襲的陽圧換気 | 高流量鼻カニュラ酸素療法 |
| 何をしている | マスクから陽圧をかけて換気を助ける | 高流量の加温加湿酸素を鼻から流す |
| CO₂を下げられるか | 下げられる | ほとんど下げられない |
| 酸素化 | 上げられる | 上げられる |
| 得意な相手 | II型呼吸不全(CO₂が溜まっている) | I型呼吸不全(酸素化だけが問題) |
| 代表的な適応 | COPD急性増悪、心原性肺水腫 | 急性low酸素性呼吸不全、抜管後 |
| 装着感 | マスクがきつい。会話も食事も難しい | 鼻カニュラだけ。会話も食事もできる |
| 外すときに見るもの | PaO₂とPaCO₂の両方 | PaO₂ |
いちばん下の行が、リハビリを組むときに効いてきます。あとで詳しく書きます
NPPVは「換気」を助ける装置
NPPVの本質は陽圧をかけて、患者さんの呼吸筋を肩代わりすることです
吸気のときに高い圧(IPAP)、呼気のときに低い圧(EPAP)をかけます。この差が換気量を生み出すので、IPAPとEPAPの差を広げるほど1回換気量が増え、CO₂が下がります
EPAPのほうはPEEPと同じ働きで、肺胞を開いたまま保ちます。こちらは酸素化に効きます
NPPVで覚えておく設定
IPAP:吸気時にかける圧。EPAPとの差が換気量を決める=CO₂を下げたければIPAPを上げる
EPAP:呼気時にかける圧。PEEPと同じ=酸素化を上げたければEPAPを上げる
Sモード(自発)/Tモード(強制)/S/Tモード(自発に合わせるが、止まったら強制換気)
エビデンスが特に強いのはCOPDの急性増悪と、心原性肺水腫です。COPD急性増悪では、pHが7.35未満でPaCO₂が高い状態がNPPVの出番になります。挿管を回避できる可能性があるので、早めに始めるほど効きます
逆に禁忌もはっきりしています。意識障害、気道が確保できない、循環が不安定、嘔吐している、顔面の外傷。マスクを当てて陽圧をかける以上、自分で気道を守れない人には使えません
ハイフローは「流量」で勝負する装置
ハイフロー(HFNC)は陽圧をかける装置ではありません。30〜60 L/分という、患者さんの吸気流量を上回る量を流し続けることで効果を出します
効果は大きく3つです
1. FiO₂が設定どおりに入る
普通の鼻カニュラは、患者さんが強く吸うと周りの空気が混ざって、実際のFiO₂が下がります。ハイフローは吸気流量を上回る量を流すので、設定した酸素濃度がそのまま届きます。0.21から1.0まで、狙った濃度にできます
2. 解剖学的死腔を洗い流す
高流量のガスが上気道に溜まったCO₂を押し出します。死腔が減るので、同じ換気量でも効率が上がる。ただしこれはCO₂を「下げる」というより「増えにくくする」程度で、NPPVのような換気補助にはなりません
3. わずかなPEEP効果
流量に応じて気道内に軽い陽圧がかかります。ただし口を閉じている状態で3〜5 cmH₂O程度。口を開けると逃げます。NPPVのEPAPのようには当てにできません
もうひとつ大事なのが加温加湿です。37℃、絶対湿度44 mg/Lまで加温加湿するので、高流量でも鼻や喉が乾きません。だから患者さんが耐えられて、長時間続けられます
使い分けの軸は1本だけ
迷ったらここを見る
血液ガスでpHとPaCO₂を見る。
pHが下がっていてPaCO₂が高い(呼吸性アシドーシス)→ NPPV。換気を助けないと解決しない
PaCO₂は正常で、PaO₂やP/F比だけが悪い → ハイフロー。酸素化の問題なので流量と濃度で対応できる
よくある誤解が、「ハイフローのほうが新しくて高性能だから、こっちを使えばいい」というものです。CO₂が溜まっている患者さんにハイフローを当てても、換気は増えません。時間だけが過ぎて、気づいたときには挿管、ということになります
逆に、酸素化だけの問題なのにNPPVのマスクで縛ってしまうと、患者さんが苦しいだけです。食事も会話もできなくなり、せん妄のリスクも上がります
血液ガスの読み方そのものは別記事に書きました。pHとPaCO₂の見方に自信がなければ、先にこちらを
うまくいっていないサインを見逃さない
どちらも「効かないまま続けること」がいちばん危ないです。挿管のタイミングを逃すからです
NPPVの場合
まず開始から30分で血液ガスを再検します。pHとPaCO₂が改善していなければ、そのまま続けても好転しにくい。呼吸数が減らない、意識が落ちてきた、というのも危険なサインです。早い段階で見切りをつけられるかどうかが、挿管のタイミングを逃さないための分かれ目になります
ハイフローの場合
私が見ているのは、開始1時間、6時間、24時間のタイミングです。呼吸数、SpO₂、必要な酸素濃度。この3つが下がってきていれば順調です。とくに呼吸数が減らないときは、うまくいっていないことが多いです
数字で示したいときは、文献で使われているROX indexという指標もあります。私自身は普段の判断に使っているわけではありませんが、医師に伝えるときの根拠として知っておいて損はありません
ROX index
ROX =(SpO₂ ÷ FiO₂)÷ 呼吸数
例:SpO₂ 95%、FiO₂ 0.5、呼吸数 24回/分
(95 ÷ 0.5)÷ 24 = 190 ÷ 24 = 約7.9 → 4.88以上なので経過は良好
どの指標を使うにしても、大事なのは「なんとなく苦しそう」を「数字で悪化している」に変えることです。呼吸数だけでも記録して並べておくと、医師に伝えるときの説得力がまったく違います
リハビリで見るのは、デバイスではなく血液ガス
ここは誤解されやすいところです。NPPVだから離床できない、ということはありません。マスクをつけたまま端座位になることも、立つことも、車椅子に乗ることもあります。実際、よくある話です
ハイフローも同じで、鼻カニュラなので装着したまま動けます。つまりデバイスの種類そのものは、離床の制限になりません。回路の長さや酸素の供給をどうするかは調整が要りますが、それは段取りの問題であって、やれるかどうかの問題ではありません
見るべきなのはデバイスではなく、そのデバイスがついた状態で、今どういう血液ガスになっているかです。NPPVやハイフローで支えた結果として、今の値がある。だから支えを外したらどうなるかを考えることが、リハビリを組むときの実際の判断になります
そして、外したときに気をつける項目がデバイスによって違います。ここは、この記事の軸とまったく同じです
ハイフローを外すとき → PaO₂
やっているのは酸素化の支援なので、外して問題になるのも酸素化です。SpO₂の下がり方と戻り方を見ていれば、おおむね追えます
NPPVを外すとき → PaO₂とPaCO₂の両方
NPPVは換気も支えています。外せば酸素化だけでなく、CO₂が溜まる方向にも動きます。しかもSpO₂は酸素を流していれば保たれてしまうので、そこを見ているだけでは気づけません。II型呼吸不全の患者さんなら、なおさらです
外している間にSpO₂がどれくらい下がって、どれくらいで戻るかを見ておくと役に立ちます。5分外して大丈夫な人と、1分で落ちる人ではやれることが違う。その情報は主治医にとっても、離脱を進める判断材料になります
離床の可否は施設ごとに基準があります。ここに書いたのは考え方であって、実際の判断は必ず主治医と施設の基準に従ってください
まとめ
| 迷っている場面 | 選ぶもの | 理由 |
|---|---|---|
| COPD急性増悪でpHが7.35未満 | NPPV | 換気を助けないとCO₂が下がらない |
| 心原性肺水腫 | NPPV | 陽圧が肺水腫にも心負荷にも効く |
| 肺炎でP/F比が下がっているがCO₂は正常 | ハイフロー | 酸素化の問題。濃度を確実に届けられる |
| 抜管した直後 | ハイフロー | 再挿管の予防。加温加湿で喀痰も出しやすい |
| 意識が落ちている、嘔吐している | どちらも不可 | 気道を守れない。挿管を検討する場面 |
試験ではこう問われます
NPPVの適応で必ず出てくるCOPD。その診断基準をアプリの第1章から1問置いておきます
Q. 努力性呼気1秒量(FEV₁)と努力性肺活量(FVC)の比(FEV₁%)が70%未満で診断される疾患はどれか。
1. 特発性肺線維症
2. 肺炎
3. 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
4. 肺結核後遺症
5. 肺水腫
答え:3
スパイロメトリーでFEV₁%(FEV₁/FVC)が70%未満、つまり気流制限があることがCOPD診断の基本です。健常者では70〜80%以上あるため、70%未満は閉塞性換気障害を示します。特発性肺線維症は拘束性で、1秒率はむしろ保たれます。
出典
NPPVおよび高流量鼻カニュラ酸素療法の適応・設定・管理は、呼吸療法の標準的な成書および3学会合同呼吸療法認定士 認定講習会テキストの内容に基づいて記載しています。ROX indexはRocaらの報告による指標です。
試験範囲としての位置づけは公益財団法人医療機器センターの公表資料によります。
・第31回3学会合同呼吸療法認定士 認定講習会及び認定試験
設定値や適応は施設の方針によって異なります。実際の運用は必ず主治医および施設の基準に従ってください。
著者:こたち(りよたろ)。3学会合同呼吸療法認定士/認定理学療法士(呼吸器)/心臓リハビリテーション指導士/腎臓リハビリテーション指導士。急性期病院のICUで13年、呼吸療法の現場にいます。
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